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覆面芸術家バンクシーとは?その作品の意味は?

2019年5月3日

覆面芸術家バンクシーとは?その作品の意味は?(バンクシーイメージ画像)

バンクシー(Banksy)は昨年一躍日本でも有名になりましたね!

そ~、あの絵画のシュレッダー事件です!
約1億5000万円で落札されたバンクシーの絵が、落札直後に自動でシュレッダーにかけられてしまったのです。

自分が落札してたらその場で卒倒してもう目を覚ますこともないかもしれません。

そんな自らの絵を裁断する仕掛けを作ってしまうバンクシー、一体どんな人物なんでしょうか?



バンクシーとは?

バンクシーはイギリス・ブリストル出身のアーティスト、ということ以外は素性も素顔も謎に包まれています。
そのアートは場所を選ばず神出鬼没、世界各地にゲリラ的に出現します。

世界各国の壁に反権力・反政府的な風刺画を描いたり、無許可で美術館にこっそりと作品を飾ったりするため、“芸術テロリスト”、とも呼ばれています。
その作品はとりわけ、戦争や移民・人種差別・社会的弱者をテーマに描かれていることが多いです。

ただ、その評判は賛否両論です。
素晴らしいと評価する人もいれば、違法行為だ、とする人もいます。
テーマが政治や社会問題に関わっているだけに、その部分でも肯定派・否定派と大きく分かれてくるのでしょう。

バンクシーのアートは突然世界各地に出現するため、素性も謎です。
その分、その正体に関しても様々な憶測が飛び交います。

最終的に一番有力とされているのが、イギリスの音楽ユニット「マッシヴ・アタック」のメンバーであるロバート・デル・ナジャ、だという説です。

実際にマッシヴ・アタックが各地でツアーを行うと、同時期に辿るように同じ場所でバンクシーの作品も出現しているようです。

また、2017年にパレスチナ自治区のベツレヘムで、実際にバンクシーが絵を描き終わった瞬間がたまたま観光で訪れたイギリス人の青年によって撮影されています。
この撮影の1週間後に全く同一の絵がバンクシー本人によって公開されています。
撮影した青年は、描き手がバンクシーだとは思わず、無名のストリートアーティストが描いたもの、と思って撮影したそうです。

ちなみにインタビューで、ロバート・デル・ナジャはバンクシーは自分ではないと否定しています。

バンクシーの作品、絵の意味

花束を投げる人

恐らくバンクシーの作品の中でも世界で一番有名なのがこの「花束を投げる人」ではないでしょうか?
かくいう自分も、バンクシー自体は当時知らなかったのですが、この花束を投げる人に関してだけは何度かオークションサイトで見たことがありました。

その時は、なんで単なる爆弾か何か投げ入れようとしているテロリストのような像が高額で何度も売れているんだろう?と全く謎でした。

ですが、自分は本当に視野が全くもって、木を見て森を見ず、でした。
男性が投げ入れようと手に握っているものは、石でも手榴弾でもなく、“花束”、だったのです。

素晴らしい作品だ、一気に見る目が180度変わった瞬間です。

人を傷つける武器の代わりに、男性が今まさに投げ入れようとしていたのは花束だったのです。

これはパレスチナ自治区の壁に2005年に描かれたものです。
恐らくこの絵には2つの意図があると思われます。

1つは、上記で述べたように、戦争に対する批判です。
戦争(石・手榴弾)の代わりに平和(花束)を。
バンクシーの強い平和へのメッセージが読み取れます。

もう1つは、男性同性愛者のデモに関する事件へのメッセージです。
2005年にエルサレムで男性同性愛者のデモが行われていたのですが、これに抗議する人々により死傷事件が起こっています。

LGBT(同性愛者・両性愛者・トランスジェンダーの総称)の総称であるレインボーフラッグは赤・橙・黄・緑・青と様々な色が混じり合っています。
この花束を投げる人の絵も、花束の部分だけ白黒ではなく、赤・橙・黄・緑・青とレインボーフラッグと重なる色がついているのです。

戦争と差別に対するバンクシーの強いメッセージが花束を投げる人の絵には込められているのではないでしょうか。

風船と少女

バンクシーの風船と少女
引用元 : news.com.au

「風船と少女」はバンクシーが世界的に有名となる最初のきっかけとなった作品です。
これはイスラエルとパレスチナ自治区の分離壁に描かれた作品です。

この分離壁は、パレスチナ人による自爆テロを防止するという名目で建てられました。
ですが、その壁がグリーンライン(1948年に定められた事実上のイスラエルとパレスチナの境界線・停戦ライン)を超えている、パレスチナを孤立させ人々の生活にも大きな影響を与えていると、避難の的ともなっています。

この分離壁に、バンクシーは風船に掴まって壁を越えようとしている少女を描きました。
描かれているのはパレスチナ側の壁です。

この風船に込められたのは、きっと“希望”でしょう。

少女と兵士

少女が兵士のボディーチェックをしています。
完全に役割が入れ替わっている絵が「少女と兵士」です。

この絵が描かれた壁が、パレスチナ自治区という部分が強いメッセージ性を帯びています。
イスラエルとパレスチナの対立、ここに少女を使うことで、問題を提起しています。

2007年にパレスチナ自治区のベツレヘムで描かれた作品です。

モナ・リザ

レオナルド・ダ・ヴィンチが描いたモナ・リザもバンクシーは描いています。

ただ、大きく違うのはモナ・リザがロケットランチャーを装備している部分です。

控えめで謎に包まれた印象が漂うモナ・リザですが、こちらは戦う気が満々です。
表情はオリジナルとモナ・リザともあまり変わらず無表情、いや、微笑しているのでしょうか、逆にそこがより怖くもある作品です。

2007年~2008年の間にイギリスのロンドンに書かれた作品です。

パンダ

バンクシーのパンダ
引用元 : BANKCY tShirtS

両手に銃を手にしたパンダ。

かわいらしい動物であるパンダが両手に銃を振りかざしています。
バンクシーの絵は真逆・正反対のものを一緒に取り入れている作品が多いですね。

これは何を意味しているのでしょうか?

パンダの白と黒、これは白人と黒人といった人種差別について語っているのかもしれません。
白黒両方の色を合わせ持ち、銃を振りかざすパンダにメッセージが込められているようです

この作品はフランスのパリに現れたものですが、実はバンクシーが描いたものではないとも言われています。

フランスの画家であるジュリアン・ダンドン(Julien d’andon)がBad Panda Recordsというブランドのために描いたものであるという説もあります。

真相は未だ定かではない作品です。

ネズミ

昨年2018年6月にフランスのポンピドゥー・センター(大型美術館)の壁に現れたのがこちらのネズミ。

口を布で覆い、カッターナイフを携えています。

バンクシーは自身の公式インスタグラムで、“1968年にパリで反乱が起きてから50年、現代のステンシルアートはここで生まれた”と上記ネズミの写真と共にコメントしています。

1960年代はベトナム戦争が起こっており、各地で反戦デモも繰り広げられていました。
また、資本主義やフェミニズムに対しても激しい抗議が行われるようになりました。

パリでは1968年に学生が主導する大規模なストライキである五月革命(五月危機)が起こっています。
元々は大学制度の改革を学生が求めたものでしたが大学側はこれを拒否、警官隊と学生が激しく衝突する事態へと発展していきました。
ここに学生を支援する教員組合・労働者等も加わり、運動はフランス全土に拡大していったのです。

その後フランス政権は弱体化し、翌年のドゴール政権退陣の契機の1つともなりました。

バンクシーが描く作品にはネズミをモチーフにしたものが多いです。
無政府主義のボードを掲げているネズミの作品もありました。
パリにはその他、1968(8のみ横向き)という数字と共にピンクのリボンをしたネズミの絵もバンクシーによって描かれています。
1968年、五月革命の年ですね。

ネズミは恐らく社会的弱者を象徴しているのでしょう。

ちなみにネズミが向いている方角の先にはエッフェル塔がそびえ立っています。
これも何かの風刺かもしれませんね。

シュレッダーにかけられた少女と風船

上記動画はバンクシー本人のインスタグラムです。

「少女と風船」は元々2002年に、イギリスのロンドンのウォータールー橋へと登る階段に描かれていた下記作品です。

バンクシーの風船と少女
引用元 : WIKIPEDIA

この少女と風船は昨年一躍注目を浴びましたね。

競売大手のサザビーズで約1億5000万円で落札された直後、自動でシュレッドされてしまいました。
本当にこれ買ったの自分だったら気を失っています。

これは実際にバンクシーが事前に仕掛けていたようです。

“破壊の衝動は創造的でもある (The urge to destroy is also a creative urge&quot)”

ピカソの言葉を引用してインスタグラムにコメントを載せています。

ただ、この作品、全て裁断されたわけではなく、途中で止まっています。
途中で裁断が止まったこと、オークション内である種完成された史上初の絵、ということで、無価値になるどころかむしろ価値が上がりました。

バンクシーはどのような意図でそもそも絵の裁断、という仕組みを組み込んだのでしょうか?

最終的に絵の価値を上げた、サザビーズと組んでいたのでは、ということから、人によってはバンクシーは資本主義に取り込まれている、と批判する人もいます。

バンクシー自身は、“裁断は途中で終わらせる予定ではなく失敗に終わってしまった・サザビーズはこの件に一切関与していない”、と公式に述べています。

真相は定かではありませんが、作品のタイトルは裁断後、「少女と風船」(Girl With a Balloon)から「愛はごみ箱の中に」(Love Is in the Bin)へと変わったそうです。

美術館にこっそり置かれたバンクシーの作品

バンクシーは世界的に有名な美術館の片隅にこっそりと自分の作品を何度も展示しています。
ニューヨーク近代美術館(MoMA)・大英博物館・メトロポリタン美術館・ブルックリン美術館、等々です。
どれも世界で著名な美術館ですね。

ルパンが金品をこっそり盗んでいくのに対し、バンクシーは自分の物をこっそり置いていきます。
1度も捕まることなく成功しているのがすごいところ、いや、もはや美術館実際協力してるのでは?とさえ思うのですが。

ですが、ロイター通信にバンクシーはこうも語っています。

“どこも何かが持ち込まれるより、持ち出されることを警戒している”

ア・ハ!!

個人的には2005年に大英博物館にこっそり展示された「街はずれに狩りにいく古代人」が受けてしまいました。
最初この壁画を見た時、これは確かによくありそうな壁画だし、それは誰も気付ないよな~、っと自分も思いました。

ですが、よく見てみたら、これ古代人押してるのショッピングカートだし!!

絶対古代にスーパーのショッピングカートは存在していない!!

思わず笑ってしまいました。

しかもこれ、美術館のスタッフも気付くまで3日間かかったのだとか。
3日間はみな普通にこの展示物の前を通り過ぎるか、特に注意せずささっと見て次へ行ってしまっていたのです。

その他にも、ニューヨーク近代美術館には「トマトスープ缶」、メトロポリタン美術館には「ガスマスクの女性」をバンクシーは飾っています。
メトロポリタン美術館は翌日には気付いたものの、ニューヨーク近代美術館では4日間誰にも気づかれず展示されていたそうです。

芸術と人間に対する風刺としてバンクシーはこっそり作品を展示していたのかもしれません。

こ~ゆ~バンクシーのジョーク好きって方も多いと思いますが、実際自分もこの手のジョークは好きではありますが、正直難しいところでもあります。

やはり無断でやるのは違法なことに変わりはありません。
これを真似して、バンクシー以外のアーティストもどんどんやり始めたら、もはや美術館はカオスです。
バンクシーだから、と大目に見られるのは少し違う話だと思いますし、それこそ本人も望んでいない気もします。

また、これはある種とても怖いことだとも思いました。
こんな世界の名だたる美術館が、いとも簡単に外部からの物を数日間展示させてしまう事実にです。
これが、もし人に危害を及ぼすような巧妙な仕掛けのしてある悪意のあるものだったとしたら。

バンクシーの行為はいずれにしても、何かしら注意を喚起します。

路上でこっそり売られる本物のバンクシーの絵

2013年の10月、1枚$60(約6500円)で本物のバンクシーの作品がニューヨークのセントラルパークの隅で販売されていました。
ただ、バンクシーはこの絵が本物のバンクシーの作品だということは一切隠し、販売も他の人に任せています。

午前中から販売を開始しますが、みんな素通りです。
まさかこれが本物のバンクシーの作品だとは誰一人夢にも思っていないのです。
本物だと分かったら間違いなく一瞬で完売していることでしょう。
自分も通りがかったら間違いなく普通に素通りしてますね。

1時間過ぎても2時間過ぎても、お客さんは0、販売しているおじさんも途中であくび、お昼はのんびりと食事です。
4時間後にようやく1人の女性が絵を購入します。
しかも交渉の末半額に値下げしてもらって2枚購入です。

その30分後には今度はニュージーランド人の女性が1枚購入します。

1時間30分後にはシカゴから男性が新しい家の壁に飾りたいと4枚の作品を購入します。
この男性が最後のお客さんとなりました。

最終的に1日で売れた枚数は7枚、約4万5千円($420)です。
ですが、実際の価値はなんと総額約2430万円($225,000)です。
1人約6500円支払うことで、300万円以上の価値の絵画を購入していたのです。

購入された方は後から本物だと知ってさぞびっくりしたことでしょう!

バンクシーは、これも風刺として販売したのではないでしょうか。
数百万、数千万円で取引される自分の作品も、全てを取り払って現実の場に出してみるとこんなものなのだ。
誇大化された作品、自分と社会を揶揄する意味も込められていたのではないでしょうか。




まとめ

バンクシーは、なにかと賛否両論を巻き起こしている謎の芸術家です。
もはや今はもうあまり謎でもない、という意見もあるかもですが。

個人的には、花束を投げる人や風船と少女等、希望を感じさせてくれる作品は好きです。
かと言ってバンクシーを全面支持するかというと、自分は半々です。

いずれにせよ、良い悪い含め、ある種物議を醸す、という部分そのものに大きな意味があるのかもしれません。
注目を喚起することで、人は気付き考えます、個人的にはここに意味がある気がします。

今後のバンクシーの動きが気になるところです!

PS. その後「バンクシー作品らしきネズミの絵」が都庁で展示されていたので見に行ってきました。その時の様子は下記の通りです

東京都庁までバンクシー作品らしきネズミの絵を見に行ってきました!