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Winny騒動とは何だったのか?開発者のなにがすごかったのか?

2023年3月31日

パソコンと手(Winnyイメージ画像)

先日Winnyの映画を見てきました。

当時ドンピシャで生きていた世代のはずが、自分は全くこのWinnyの騒動について記憶がありませんでした・・。

自分だけどこか別の世界線で生きていたのだろうか?

気になって友人に聞いてみると、自分と同様に記憶にないという人もいれば、ニュースになったよね、という人もいたりと人によって分かれました。

ここではWinnyってそもそもなに?というところから自分は映画を見てきたので、Winnyと当時の出来事について簡潔にできる限り分かりやすくご紹介できればと思います。

※ 以下の記事は多少ネタバレを含んでおりますので、ネタバレは困る、という方は映画を見た後に再訪していただけるとなによりです



Winnyとは

WinnyとはPeer to Peer (P2P)技術を応用したファイル共有ソフトです。

2002年に元東京大学大学院情報理工学部研究科助手金子勇氏が開発を開始しました。

Peer to Peer(以下P2P)はネットワークで繋がったコンピューター同士がサーバーを通さず通信できる通信方式のことです。

P2Pイメージ

今でいう仮想通貨に使用されているブロックチェーンの仕組みの根幹ですね。

その他、LINEで写真や動画を共有する際にもP2P技術は利用されています。

サーバーはサービスを提供する側のコンピューターのことです。

現在のインターネットは主としてGoogle・Amazon・Facebook・Appleなど巨大IT企業等の中央サーバーが大量の情報を管理しそのサーバーを通さないとユーザーは情報のやり取りができません。

自分が書いているこのブログ自体もサーバーを通し情報をインターネット上に公開しています。

クライアント・サーバー方式イメージ図

サーバーに情報が全て集約されるクライアント・サーバー方式(中央集権)ではなく、ネットワークで繋がった全ての端末が情報を共有するのがP2P(非中央集権)です。

P2Pはデータの集中防止・匿名性の確保などのメリットがあります。

サーバーを経由しウェブサイト等を見ていると、アクセスが急増した際そのウェブサイトのサーバーがダウンして閲覧できなくなることがありますが、P2Pではデータが1ヶ所に集中することはありません。

また、P2Pではデータもネットワーク上に分散しているため通信の特定をすることが困難です。
これにより匿名性を確保しやすいのです。

逆にデメリットもあり、いったん情報が流出すると止めることはできません。
匿名性故に違法に利用されてしまうこともあります。

金子氏は2002年5月にこのWinnyのベータ版を2ちゃんねる(電子掲示板サイト)で公開しました。

その時最初に書き込んだレス番号により、47氏とその後2ちゃねんる内では呼ばれるようになりました。

Winny騒動とは

金子氏により2002年に開発が開始されたWinnyですが、2003年11月に逮捕者が2人でます。

Winnyを使用し著作権のある映画ファイルやゲームソフト等を違法に公開したためです。

著作権違反幇助による金子勇氏の逮捕

翌年2004年5月にはWinnyの開発をした本人として金子氏自身も著作権法違反幇助の疑いにより京都府警察に逮捕、その後起訴されます。

金子氏自身は違法アップロードはしていませんでしたが、Winnyが違法に使われることを幇助(ほうじょ)した、ということです。

幇助に関しては警報62条1項に,“実行犯に、一定の手伝い,手助けした者を幇助犯といいます”、と書かれています。

当時金子氏の弁護を務めた檀弁護士はこの事件をナイフに例え語っています。

ナイフを使って人を刺した場合、刺した人のみならずナイフを作った人まで逮捕されてしまうのか、ということです。

同時に金子氏がWinnyを公開した時にその匿名性を利用し違法に使われる可能性を把握・予見できたのも事実だと言われます。

数年前の1999年にはNapsterがアメリカの学生の間で大流行し音楽の違法コピーが出回っています。

Napsterも音声ファイル限定ですが、インターネットを通じ個人間でファイル交換を可能にするファイル共有ソフトです。

最終的にNapsterは2000年7月に敗訴しそのサービスを停止しています。

ウイルス感染によるデータ流出

その後2004年頃からはWinnyを利用したユーザーの中からワーム(マルチウェア)に感染する者が出始めます。

個人の情報だけでなく一般企業の業務データ、最終的には陸海空自衛隊の情報や京都県警の捜査書類も流出しています。

2006年3月15日には阿部元総理(当時は阿部官房長官)が「情報漏洩を防ぐ最も確実な対策は、PCでWinnyを使わないことです」と記者会見で異例の呼びかけをおこなっています。

京都地方裁判所での有罪判決

金子氏には2006年12月13日に罰金150万円の有罪判決が京都地方裁判所で言い渡されます。

ここで仮に金子氏が判決結果を承諾し罰金を支払えば再びソフト開発に専念することができました。

ですが、ここで結果を受け入れてしまえばその後の自分のような開発者に悪影響を与えてしまうと考え控訴し裁判を続行することを選択します。

2ちゃんねるの有志の気持ちも大きかったのではないかと個人的に感じます。

壇弁護士が金子氏の裁判費用を2ちゃんねるを中心に呼びかけたところ約1600万円ものお金が集まったのです。
金子氏は当時2ちゃんねる内で神とも称えられていたのです。

大阪高裁での無罪判決

最終的に2009年の大阪高裁の判決で無罪判決となります。

大阪高等検察庁はこの判決を不服として最高裁判所に上告しますが2011年に12月20日にこの上告は棄却され無罪が確定します。

無罪を勝ち取るまでに7年もの歳月が流れていたのでした。

金子勇氏の逝去

2013年7月6日金子勇氏は急性心筋梗塞でこの世を去ります。

無罪が確定した後、東京大学の特任講師としての職に復帰してから半年後、42歳の若さでした。

Winnyはなにがすごかったのか

WinnyはP2Pネットワークを実用レベルで構築し使えるようにしたのがすごかったと言われます。

P2Pネットワークを使用したソフト自体はWinny以前にもありました。

FreenetMX(WinMX)等が当時は有名でした。

ですが、動作が重かったり匿名性を担保できていなかったり、実用性には欠けました。

P2P技術を利用し実用レベルにまでもっていったのがWinnyだったのです。

とりわけWinnyは当時他のP2Pでは不可能だった動画のダウンロード能力が圧倒的な早さだったと言われています。

これを企業ではなく一個人が完成させてしまったのが2ちゃんねる内で神とも呼ばれた所以だったのかもしれません。

まとめ

Winnyに限らずインターネットもSNSもなんでも諸刃の剣です。

正当な使い方をすればとても有益なものになりますが、誤った使い方をすれば人さえ殺めてしまいます。

Winnyの争点は違法に利用した者だけでなく幇助という理由で開発者まで逮捕された部分でした。

惜しかったのは無罪となってこれからという時に亡くなってしまったことです。

金子氏が裁判にこだわったのも、関わってくれた人達の応援や自分に続く若き開発者が堂々と開発をしていけるように、ということでした。

最後に無罪となったのはその点において大きな意味があり、その想いはこれからの世代にきっと受け継がれていくのだろうと感じました。