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人工知能(AI)とロボットが環境問題を解決していく!具体的な取組み

2018年7月17日

人工知能(AI)

人工知能(AI)、ここ最近はよく聞く言葉ですね。

ターミネーターのようなAIロボットに支配される世界になる、人間の仕事がなくなるとマイナスの話もよく聞きますが、実際人工知能やロボットは私達の生活においてプラスの役割も果たします。

私達の環境問題を解決するプラスの手段として活かすこともできるのです。

では、実際には今どんな取り組みが行われているのでしょうか?

ここでは日本と世界において、人工知能とロボットが環境問題解決の手段として具体的に利用されている事例を取り上げていきたいと思います。



ロボティクスリサイクラー(ZRR)によるゴミの選別

埼玉県にあるシタラ工業は現在AIを使用しゴミの選別を行っています。
シタラ工業は日本で初めてAI選別ロボットを廃棄物処理場に組み入れゴミ処理を開始しました。

このAIを取り入れるまでは、選別作業に18人の作業員が必要でしたが、AI導入後は作業員(監視員)が2名にまで減りました。
選別作業はそもそも長時間現場に立って監視・選別しなければならず、ゴミの種類もガラスの破片・コンクリートの破片・陶器の破片と多種多様で、作業員にとっても大きな肉体的負担となっていました。

しかし、カメラ等でスキャンされた廃棄物を人工知能で把握し、ロボットで選別することで、今では必要な作業員は10分の1にまで減り、処理できる廃棄物も人員で行う5倍の量にまでなりました。

シタラ工業が導入したAIはフィンランドで開発されたロボティクスリサイクラー(ZRR)と呼ばれる高性能ロボットシステムで、人工知能を駆使し98%の高次元の精度で廃棄物の選別ができます。

実際自分もこのAIロボットが稼働しているところを動画で見たのですが、かなり手際よく瓦礫を分別してました。
瓦礫のような大きなゴミだけでなく、小さなゴミまでしっかりと上空からアームでキャッチして選別していました。
これは確かに圧倒的に人の手でやるより早いと感じました。

ロボティクスリサイクラー(ZRR)の紹介動画

商品需要予測サービスによる食品ロス(フードロス)の削減

日本気象協会AIを駆使し食品と商品の廃棄を減らす取り組みを行っています。

なぜ気象が食品ロス(フードロス)に関係あるの?
と思うかもしれません。

はい、実際自分も最初はでした。

ですが、世界にある全ての産業のうち3分の1は"なんらかの気象によるリスクを抱えている"と言われています。
台風、地震、大雨、雪、津波、確かに自然現象は産業に大きな影響を与えます。

実際に自分は食品関連の物流会社で以前事務をしていたことがあるのですが、地震が起こったり、大きな台風が来た時にはとても大変でした。
賞味期限がその日や翌日に切れてしまう食品は、届くのが数日でも遅れてしまったらそのまま全て廃棄になってしまいます。

日本気象協会はAIを使用し、気象予測データ、販売データ等ビッグデータ(巨大なデータ群)を解析することで未来に必要とされる食品・モノの量を予測する商品需要予測サービスを提供しているのです。
これにより食品の廃棄が減るだけでなく、商品の返品や返送といった車両の利用に伴う無駄な二酸化炭素排出量も削減できます。

実際このAIによる商品需要予測サービスを利用しているのが豆腐メーカーの相模屋食品です。

基本小売店から豆腐の発注依頼がくるのは前日ですが、豆腐は製造するのに2日間かかります。
なので発注がきてから豆腐を作っていてはとても間に合わないので、1日前倒しの2日前にこれぐらいの量だろうと予測をたてて生産しなくてはなりません。

けれど実際には足りませんでしたという状況を避けるためにも多めに作ったりします。
また、気象によって豆腐は大きく売れ行きが変わる商品なので、ここでも売れなかった場合はロスへとつながります。

そこで気象データと人工知能を駆使し、予測データを作り、相模屋食品と小売店の間で情報を共有、生産数を調整したのです。

すると最終的に豆腐のロスがほぼゼロに近い状態となったそうです。

これは本当にすごいことだと思いました。
豆腐以外にも様々な食品メーカー、そしてレストラン等飲食店にも活用していくことができます。

農林水産省によるフードロスのデータでは、2014年は621万トンもの食品が廃棄されています。
そのうち食品関連事業者(飲食店・食品メーカー・小売店等)からの廃棄は339万トンです。
年間の食品廃棄量の6割近くがレストランや食品に関連するメーカー・小売店から出ているのです。

フードロスに関しての詳細は、こちらでも記事にまとめました。

今注目のフードシェアリングサービスが食品廃棄(フードロス)を減らす!

日本気象協会が提供するAIによる商品需要予測サービスは、食品ロスに大きく貢献できるのです。

イーバード(eBird)による鳥の生息地の保護

イーバード(eBird)は鳥に関するデータを共有できるモバイルアプリです。
米国コーネル大学のカーラ・ゴメス教授とそのチームにより開発されました。
専門家からバードウォッチャー、一般の人まで鳥に関心にある人でしたら誰でも無料で参加、使用することができます。

その場で撮った鳥の写真、鳥のさえずり等の音声をアップして共有する仕組みです。
2017年12月時点では、約36万3千人が参加し1万3百種の鳥が観測されています。

世界中から集められたデータを共有し、鳥の生息域の保護に役立てていこうという取組みがイーバードです。

イーバードが開発される以前は、多くの種において包括的な個体数の動きを把握することは不可能でした。
しかし、NASAからのリモートセンシング(衛星等遠隔から観測する技術)とイーバードに参加する世界中の人々からのデータを組み合わせることで、いつどこにどんな鳥がいるのかといった細かな情報まで把握できるようになったのです。

またマシーンラーニング(機械学習)を使うことで、特定の鳥の種の生息域と渡りの時期に使うルートに将来どんな変化が起こるのかということも予測できるようになるのです。
マシーンラーニングは機械、すなわちAIが自ら画像などの情報を認識判別し学習していくことです。

鳥の動きを把握することで、今自然界で何が起こっているのかも把握できるようにもなります。
例えば、これまで寒冷な場所にしか生息していなかった鳥がより温暖な地域で観測されるようになったのならば、温暖化が進んでいるということかもしれません。

孤島でしか見られなかった鳥が、急に大陸で見られるようになったのであれば、水没等島に大きな自然環境の変化が起こったのかもしれません。

イーバードのデータは専門家から学生まで誰でもアクセスでき、そこで得た情報を共有して研究に活かすことができます。

AIで分析したデータを活かし、鳥を保護していくという取り組みとしてイーバードは今後が期待されています。

イーバードの紹介動画

スマートグリッド(次世代送電網)によるエネルギーの削減

ノルウェーの再生エネルギーのリーディングカンパニーであるAgder Energiはマイクロソフトのクラウドと人工知能を活用し、現在送電線網のデータを取得・分析しています。

販売される新車の4割が電気自動車(EV)であるノルウェーは、電気の負担が年々増し、必要な電気量も予測しずらくなっています。

また、日本でも電力の自由化が進んでいますが、東京電力や関西電力等、特定の電力会社・工場だけを送電線でつなぎ電力を供給するという従来のやり方はもはやフレキシブルな方法ではありません。

電力を消費する私達もソーラーパネルをつけ自家発電をしたり、それ以外にもIoT(モノのインターネット)、デジタル化された音楽・写真・HDレコーダー等デジタル情報家電を利用するようになりました。
電力の需要を把握するのがより難しくなってきているのです。

ここでAgder Energiが活用したのがスマートグリッド(次世代送電網)です。
スマートグリッドは発電所や送電網以外にも、家庭や工場等の電力消費地を光ファイバー等ネットワークで繋ぎます。
このスマートグリッドにおいて、全てのIoT家電をクラウドに接続し、電力会社はクラウドに集まったビッグデータとマシーンラーニングを取得・分析することができるのです。

その結果、電力をより効率的に使用でき、その分電気代も安くなるのです。
無駄な電力を減らし環境にも家計にもやさしい方法となるわけです。

グーグルは実際にディープマインド(イギリスの人工知能企業・現在米グーグルの親会社であるアルファベット傘下)の人工知能を使ってグーグルのデータセンターがいつ一番高熱になるのかを予測させ、必要な時だけ冷却システムを稼働することでサーバーのコストを約40%削減することに成功しています。

NASA(米国宇宙局)による気候変動・海洋変化の予測と取組み

NASA(米国宇宙局)の研究者であるセシル・ルソーはプランクトンの分布・生息数をより詳細に把握するためにマシーンラーニング(機械学習)を使っています。
2022年に開始されるPACEと呼ばれる衛星プロジェクトでは、より詳細にプランクトンの生息数や個々の種類、海洋での生息域を把握できるようになります。

海洋上のプランクトンを正確に理解することで、微生物が大気中の二酸化炭素にどのような影響を及ぼすのかについてより深く把握することができるようになります。
これにより海洋での藻類の異常発生、つまり、アオコの発生を予測することが可能になります。
また、二酸化炭素を吸収するプランクトンの性質を活かし、気候変動に対処する方法を考え出す手助けともなります。

海洋プランクトンは私達が生存するために必須である酸素を大量に作り出しますが、実際植物プランクトンである珪藻の生息数は急速に減ってきていることがNASAの約15年に渡るリサーチ(1998年~2012年)で明らかとなりました。
プランクトンが減るということは、その分大気中の二酸化炭素が増加するということです。
実際珪藻が急速に減少した原因は、海中の栄養素の減少によるものですが、それが上空の風によって起こったものなのか、気温の変化によって引き起こされたものなのか、未だはっきり解明はされていません。

衛星データやコンピューターモデリング、マシーンラーニングを活用することで原因を解明し、気候変動にも対処する方法を考え出していくことが可能となるのです。

NASAによる植物プランクトン減少解明に向けた取り組み説明動画

魚型ロボットによる海洋汚染の削減

スペイン北部の町ヒホン(Gijon)にある港では、今目をぎらりと光らせ大きな魚が回遊しています。
この魚はただの魚ではありません、そうですロボットです。

魚型ロボットを利用して、海への違法投棄や工場の違法な化学薬品の排水を減らそうという取り組みです。
実際には、このロボットを海中に潜らせ、特定箇所の海水のサンプルを回収し、研究室に持ち帰って純度や汚染度を分析します。
そこから汚染の主要原因を突き止めることができるのです。

化学物質や化学薬品の廃棄、その他あらゆる違法投棄の大元を突き止める海の警察になります。
この魚型ロボットはリアルタイムで監視することができるので、その場での対処も可能となります。

現在は月に1度試験的に稼働させ、サンプルを回収していますが、今後は常時海中に配備し汚染調査をする予定だそうです。

人が海に廃棄するゴミをウミガメや海鳥等海の生物が誤食することも大きな問題となっていますね。
そんな時にもこのロボットが監視役として役立つ日が来るのかもしれません。

スペインでの魚型ロボットの取り組み紹介動画

ドローンによる有機農業

このドローンによる無農薬・無化学肥料の有機農業は日本で行われている取り組みです。

主体となって取り組んでいるのがドローンジャパン
ドローンを使用し、食料危機、環境問題、エネルギー資源の問題を解決することをミッションとしている会社です。

自分は当初ドローンを使用して田植え等の作業を行うのかと思っていましたが、全く違いました。

ドローンを低空飛行させることで、稲の生育状況をより正確に把握することができるようになったのです。

農業では、とりわけアメリカやカナダ等海外では、宇宙の衛星からの撮影した画像を利用し、作物のデータを収集しています。
離れた場所から物を測定する技術、イーバード(eBird)の取り組みでもご紹介したリモートセンシングです。

Google Mapや天気予報もリモートセンシングを利用しています。
ですが、雨の時や曇りの時はデータを収集することが難しくなります。

そこで登場するのがドローンです。

天候に左右されることなくいつでも田畑の状況を確認することができます。
これにより、作物の生育・健康状態を把握し、病虫害が発生した際も早期に把握し対応することが可能となるのです。

また、人手で行っていた農薬の散布もドローンを利用して行うことが可能となります。
農薬も、ドローンジャパンが目指しているのはあくまで有機農業なので、散布されるのは木酢液等の自然由来の農薬です。

このドローンを使用し栽培された、無農薬・無化学肥料のお米は、現在日本各地で購入することができます。
自身も先日初めて5kgのドローン米を購入しましたので、その詳細を下記記事にまとめました。

ドローン米ってなに?特別栽培のドローン米購入して食べた感想をお伝えします!

ドローンは年々高齢化していく農家の方の肉艇的負担を減らし、有機農業を行う上でも活用することができるのです。

ドローンによる有機農業の取り組み紹介動画




まとめ

人工知能(AI)というとどうしてもロボットの支配というマイナスのイメージが先行してしまうと思います。
個人的にはそのような感覚を持つことはとても大切だと思います。
けれど上記で上げた例のように、プラスの面でも大いに役立てることができるのです。

インターネットや全ての物事に言えると思うのですが、重要なのは使う側、使う人がそれをどう扱うかです。
使い方によって諸刃のつるぎにもなれば、問題を解決する大きな手段ともなります。

今回は人工知能を取り上げましたが(多分今後も時々取り上げます)、逆説的になるかもしれませんが、最終的に一番大切なのは人間の心の部分です。

一人一人が心の在り方を見つめることで、環境問題、いえ、環境問題に限らずその他多くの問題も解決できると思っています。