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種子法とはなに?廃止の理由は?少し分かりやすくまとめました!

2019年8月22日

稲(種子法とはなに?廃止の理由は?少し分かりやすくまとめました!)

昨年2018年4月に種子法が廃止されました。

実際に自分も昨年10月に生協さんのイベントの中で種子法に関して少し話を聞いてきました。

料理研究家である枝元なほみさんがゲストとして招かれ、「身近な家庭の食卓から種子法を学びましょう!」というテーマの中で話を聞いてきたのでした。

その後、本を購入して読んだり、その他にも賛否両方の情報を自分なりにいろいろ調べた内容をここではご紹介します。

※ 自分なりに個人的な意見はあまり挟まず、公平な事実を書いたつもりではありますが、あくまで一情報となるのでご参照までにということでご留意ください。ここに書いてある以外にも、調べれば賛否共により深い情報はでてくると思いますが、ここではあくまでよく議論にのぼる基本的な情報を自分なりに分かりやすくまとめた形です。



種子法とは?

種子法主要農作物種子法と呼ばれ1952年に成立した法律です。

コメ・麦・大豆の3第大主要作物が常に安定供給されるよう、それらの種子の生産・普及を国の責任とした法律です。

戦後間もない食糧難の時代に国民の食を守るためにできた法律でした。

国が種子の生産と開発に対し、管理し予算を充て補助する形です。

種子の開発予算を国が補助していたため、大きな手間とコスト・年数のかかる種を種子農家が作ることができていました。
一つの品種が開発されるまでには10年の歳月がかかり、その種を増殖し農家に渡るまでには最低でも4年かかると言われます。

種が栽培・増殖され一般の私達に渡るまでの流れを下記まとめてみました。

育種家種子は増殖の大もとになる種です。
原種は採取園にまく種(種を取るためにまく種)のことで、原原種は原種の種(原種を取るためにまく種)のことです。

育種家種子:農業研究局

原原種生産:農業試験場等

原種生産:種苗センター等

種子栽培:種子生産農家

買い取り:JA(農業協同組合)

販売:JA(農業協同組合)

一般栽培:一般の農家

一般消費者へ

種子農家が作った種はJA(農業協同組合)が安定価格で買い取り、JAが種を売る時も一般の農家は安い価格で購入することができたのです。

後述しますが、ここの予算に関しては種子法廃止前と条件は変わらない形です。

廃止された理由は?

日本政府・農林水産省は、「種子法は現代においてその役割を終えている」と廃止の理由を説明しています。

貧しかった戦後は国が管理・補助する必要があったが、今は種子の生産技術・品質も向上し、コメの供給不足も解消されたため、ということです。

また、国が管理してしまうが故に、多様化する需要に対応できなくなっていることも述べています。

中食・外食では低コストで⽣産可能な多収品種(収穫量の多い品種)の種⼦の供給が必要とされますが、国が管理すると、多収品種の種⼦より、公的機関のブランド⽶(コシヒカリ・ササニシキ等)の種⼦供給に力が注がれてしまうためということです。

国が管理すれば、国が民間米を奨励しても都道府県はブランド米の開発に集中します。
都道府県が目を向けるのは高価格の家庭用米で自分達が開発した品種を基本奨励します。
農家も役所のお墨付きの奨励品種であるブランド米を生産します。

ですが、今、家庭での米の需要は大きく下がり(パスタ・パン等食の多様化のため)、逆に米の需要が上がっているのが中食・外食産業です。
中食・外食産業事業者が求めているのは安価な業務用米です。

市場とのミスマッチが起こっている状態です。

そこで国だけでなく、民間の事業者にも参加してもらい、その需要に応えるようにしよう、ということです。
国の規制を撤廃することで民間の企業・競争原理を入れて品種開発を進めていくということです。

種苗法も改正

種苗会社の知的財産権を守るのが種苗法です。

種苗法も2018年5月に改正されています。

自家採取禁止植物の種類が82種類から289種類へ、2019年3月には387種類となりました。
自家採取は農家が作物から種子を採り、それを翌年の栽培にまわすことです。

自家採取を禁止している理由としては、種の流出を防ぐためです。
実際侵害行為が急増・顕在化しており、抑止ができていないのが現状です。

日本で開発されたとちおとめやレッドパールが無断で韓国に流出し、韓国現地で生産されたものだと報じられたりしています。
シャインマスカットも同様に中国に流出し現地生産されています。
また、それが日本へ逆輸入されたりもしています。

詳細は農林水産省の資料にも掲載されています。

日本の品種を守るため、種苗法を改正し自家増殖・採取の禁止品種を拡大した、ということです。

これも農家が自家採取できないことで在来種・固定種が失われる、毎回種を買わなければなくなる、といった意見もあります。

ただ、代々自家採取・栽培してきた在来種・固定種は今後も自家採取は可能です。
また、禁止対象となるのも育成者権が認められている作物だけです。

育成者権は新たな植物の品種に対して与えられる知的財産権(または無体財産権)のことです。
とちおとめやあまおう等は育成者権のあるイチゴの例です。

育成者権のある作物に対しての自家増殖が基本禁止となります。

現実、老齢化・労働不足で自家採取を継続する農家自体が大幅に減り続けている、というのが実情だったりします。

農業競争力強化支援法の可決

農業競争力強化支援法農業者による農業の競争力の強化の取組を支援し、農業や農業生産関連事業の健全な発展に寄与することを目的として作られた法です。

こちらも昨年2018年5月19日に公布、8月1日に施行されました。

ここで注目されるのが、下記農業競争力強化支援法第8条4項です。
 
“種子その他の種苗について、民間事業者が行う技術開発及び新品種の育成その他の種苗の生産及び供給を促進するとともに、独立行政法人の試験研究機関及び都道府県が有する種苗の生産に関する知見の民間事業者への提供を促進すること。”

“独立行政法人の試験研究機関及び都道府県が有する種苗の生産に関する知見の民間事業者への提供を促進すること”、と記載があります。

種苗の生産に関する知見とは、種の開発データ・技術・知識・遺伝子情報等です。
種の開発データ・知識・技術・遺伝子情報等を民間の会社へ提供することを促進する、ということです。
また、これは無料で行われます。

この民間の会社への提供は国内・国外といった企業への規制はありません。
外資系の企業も参入できることを意味します。

遺伝子組み換え種子と除草剤をセット販売する外資系企業も参入できるということです。
この部分についての詳細は以降のメリット・デメリットの中で後述します。

メリットとデメリットは?

種子価格値上がりによるコメ・大豆・麦の値上がりに関して

もしも国からの資金の補助がなくなれば、その分種子の価格も高騰します。
その種から作られるコメ・大豆・麦もその分高騰します。

時々野菜にも影響が出る、という話も出たりしますが、種子法が関係する農産物はあくまでコメ・大豆・麦のみです。

種子価格の値上がりは最終的に買う側である消費者へと返ってきます。

ただ、現時点では種子法廃止後も、これまで通り都道府県の種子生産に予算が確保されるよう国に求める決議が採択されています。

さらに細かく言うと、そもそも種子法に関する補助金は1998年に既に一般財源化されています。
20年以上前に農林水産省の補助金ではなく、総務省の地方交付税交付金の中で処理されるようになっています。

この予算に関しては種子法廃止前も後も条件は変わりません。

多品種という種の多様性が失われる問題に関して

民間が参入する、ということは利益が優先となる可能性があります。

利益の取れない希少米の作り手はいなくなってしまう可能性があります。

現在日本では、300品種の米が作られていますが、これほどの多品種を栽培することは、手間もかかればコストもかかります。
それより単一品種を大量に生産した方が効率的で低コストです。

単一種の大量栽培は、効率的に大量に食料を供給できる、という点では良いかもしれませんが、病害虫が発生した場合、一度に広範囲の作物に被害が広がってしまいます。

植物・動物共に多様性を失った場合、大規模に病気・害虫等が流行った時全滅してしまう可能性があるのです。

ここに関しては各地方自治体が種子条例を制定し、北海道・新潟・富山・兵庫・山形・埼玉等、各都道府県ごとに対策を取っています。
奨励品種はこれまで通り種子法同様の条例・要綱を作った各地方自治体によって守られていきます。

種子法廃止の意味がないのでは?という疑問には“多様なニーズに応じた種⼦供給体制を構築するという、種⼦法廃⽌の考え⽅に沿うものであると考えています。”との農林水産省の回答が掲載されていました。

外資・多国籍企業による種の⽀配と遺伝子組み換え作物に関して

結論からお伝えすると、外資・多国籍企業は参入することができます。

アメリカのモンサント社(2018年に独バイエル社により買収されています)の遺伝子組み換え食物等はよく引き合いに出されたりします。

モンサント社は除草剤ラウンドアップを開発し、ラウンドアップに耐性をもつ様々な遺伝子組み換え作物を育種して除草剤とセットで販売していた会社です。

アメリカ国内だけでなく海外にも進出しています。

政府が海外の種子法などの規制を撤廃させ、その後企業が進出し遺伝子組み換え作物をその国に広げその国の食を次第に支配していく、といった筋書きです。

外資系・多国籍企業の参入という点だけでいえば、種苗法と農業競争力強化支援法がそれを可能とします。

種苗法の外国人の権利の享有の項目(第十条)の中で、“日本国内に住所及び居所(法人にあっては、営業所)を有しない外国人は・・”(以下省略)という一文があります。

つまり、外国人の権利の享有に関して、日本国内に住所及び居所を有する外国人であれば良い、ということになります。

外資系企業であるバイエル社(モンサント社買収元)は日本モンサント株式会社として東京に住所があり、日本モンサント河内研究農場として茨城に農場を取得しています。

また、農業競争力強化支援法には第八条の中で“種苗の生産に関する知見の民間事業者への提供を促進すること”という一文があります。
種苗の生産に関する知見とは、上述した通りになりますが、種子の開発データ・技術・遺伝子情報等のことです。

つまり、遺伝子組み換え種子と除草剤をセット販売する外資系企業にも公共の種子の開発データが提供されます。
ここに国外業者の規制は設けられていません。

ただ、種⼦法の廃⽌により遺伝子組み換え作物の規制自体が緩和されるということはありません。

遺伝子組み換え作物は全く別の法律で規制されているからです。
それがカルタヘナ法・⾷品衛⽣法・飼料安全法です。

種子法が廃止となった現在も、コメや麦などの遺伝子組み換えは認められていません。
厚生労働省管轄の食品衛生法の安全性審査で規制されているからです。

カルタヘナ法・⾷品衛⽣法・飼料安全法のいずれかの法案に手が加えられるようになった時こそ、遺伝子組み換え食品・作物等が関係してくるのです。




まとめ

土と芽 (まとめ用画像)

種子法に関しては、賛否は置いておいて、知らぬ間にさっと決まったのだけは事実ですね。

国会でわずか12時間の審議で、種子法廃止が決められました。
しかもほとんどの国民が知らぬ間に。

森友問題が当時は主役で、そこにマスコミも国民も大きく注意がいっていたためです。
その後の水道法の改正案可決の時も同様でしたね。

基本大きな出来事が起きた時は本当に重要な物事が背面化で着実に進められていたりします。

食と水はライフラインなのでとりわけ重要な問題です。

ただ、自分自身今回実際に話を聞いたり本を読んだり、その上でいろいろ自分なりに調べて改めて感じたのが、両サイドの意見を偏見なしに、個人的な感情論も抜いて冷静に聞かなければならない、という部分です。

賛成にしろ反対にしろ、人間は自分の信じたい方を信じる傾向が強いです。
そこには個人的な理想論や感情も大きく関わってきます。

最終的な意見を出すには、反対側の本・賛成側の本と情報を両方とも偏見なしにしっかりと読み、話を聞き、プラス事実として出された科学的なデータや公文を検証する必要があると感じました。

これは種子法に限らず全てのことに言えることだと思います。

種子は自分も20代の頃ですが、在来種の種を種屋さんから買って市民農園で野菜を友達と育てていた経験があります。
多様性、というのは全ての生命・環境にとって重要で守る必要のある部分だと感じます。

PS. 今回自分が読んで主に参考にさせていただいたのは日本が売られる (幻冬舎新書)という本、及び農林水産省のホームページです。